ルーシー・パイパー(medwireNews 記者)
medwireNews:アルツハイマー病(AD)患者における抗アミロイド抗体ドナネマブの適正使用に関する推奨事項(AUR)が、ADおよび関連障害の治療ワークグループにより作成された。
ギル・ラビノヴィッチ氏(UCSF、米国カリフォルニア州サンフランシスコ)は、スペインのマドリッドで開催された2024年アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)でAURを発表し、「実臨床において、臨床医が適切な治療候補を特定するための指針になる」ことが期待されると述べた。
同氏は、「AURは推奨事項であり、ガイドラインでも基準でもない。個々の患者を治療する際には、常に臨床的判断が最優先される」と指摘した。
ワークグループメンバーは、ドナネマブの臨床試験データ、FDAの処方情報、その他の関連文献に基づき、専門家の意見も交えて推奨事項をまとめた。
ドナネマブ治療の適格患者は、軽度認知障害またはADによる軽度認知症(全般的認知機能低下評価尺度で臨床ステージ3~4)を有し、ミニメンタルステート検査のスコアが20~30であるとした。
患者は、陽電子放射断層撮影(PET)の臨床読取りまたは脳脊髄液(CSF)バイオマーカーでアミロイドβ病変のエビデンスを確認される必要があり、アミロイドβ42/40およびリン酸化(P)-タウ181/アミロイドβ42比が最も信頼できると考えられている。
ラビノヴィッチ氏は、血液ベースのバイオマーカーを治療の適格性判定に使用するのは、性能にばらつきがあり臨床での使用経験が乏しいため、「適切なタイミングではない」と述べた。しかし、「近い将来、治療適格性判定に十分となるかもしれない」と認めた。
最初のTRAILBLAZER-ALZ 2試験では、タウPETの視覚的解釈と定量化が患者の組み入れに用いられたが、臨床での利用が限られていることと、解釈のためにFDAによって承認された簡略化された二値読取りによる解釈を考慮し、グループはそれを要件とはしないことを推奨している。「しかし、利用可能であれば、臨床反応の推定値の個別化のために使用することができる」と同氏は述べた。
治療前にアポリポ蛋白Eの遺伝子型判定を行い、ARIAのリスクを患者に助言することが推奨される。また、有害事象のリスクが高い可能性があり、除外すべき患者を特定するために、6~12ヵ月前に磁気共鳴画像法(MRI)を行うことも推奨される。
これには、TRAILBLAZER-ALZ2試験でARIAのリスク上昇が認められなかった抗凝固薬服用患者が含まれるが、ラビノヴィッチ氏によれば「データは限られていた」し、抗凝固療法による脳内出血のリスク上昇は以前報告されたことがある。「試験や実臨床使用から得られるデータが増えるにつれ」これは変わる可能性があり、抗血小板薬の使用に制限はない、と同氏は述べた。
また、重度の白質病変がある患者や、4個を超える微小出血、1cmより大きな大出血、脳表ヘモジデリン沈着症など、MRIで重大な脳アミロイド血管症が認められる患者も、除外することが推奨される。
治療をモニターするために、ドナネマブ700mgの初回投与から1ヵ月後、2回目の700mg点滴の前に、また3ヵ月目の3回目の700mg点滴の前、4ヵ月目の1400mg点滴の前、そして最後に7ヵ月目の点滴の前に、フォローアップMRI検査を行うことが推奨される。
ドナネマブ治療中は血栓溶解薬を使用すべきではないが、機械的血栓除去術だけを行うことは可能であると考えられる、とラビノヴィッチ氏は述べた。
MRIで大出血、2カ所以上の脳表ヘモジデリン沈着症、10カ所を超える微小出血、2回より多いARIA、重度のARIAが確認された場合、または患者が抗凝固薬による治療を必要とする場合は、ドナネマブの投与を中止することが推奨される。
さらに、アミロイドPETによる経過観察で陰性であれば、臨床医は、通常12~18ヵ月で治療を中止することを考えてもよい、とラビノヴィッチ氏は述べた。
同氏は、「ADにおける精密医療を進歩させるためには」、「適格性についてFDAが審査し、承認した血液ベースのバイオマーカーが必要」であり、「少なくとも一部の患者では、アミロイドとタウPETの利用のしやすさの向上と定量的読取り」が必要であると結論づけ、「有効性と安全性に関する長期的な実臨床データが必要である」と強調した。
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