カンファレンス3 – ナゲット4

3年間のレカネマブ投与は、早期アルツハイマー病(AD)患者に効果を与え続ける

ルーシー・パイパー(medwireNews記者)

medwireNews: レカネマブの3年間の有効性と安全性のデータでは、特に疾患の超早期に投与を開始した患者において、治療効果が持続していることが示されている。

クリストファー・ヴァン・ダイク氏(米国コネチカット州ニューヘブンのイェール大学医学部)が、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアで開催されたアルツハイマー病協会国際会議2024において研究結果を発表した。

フェーズ3 CLARITY ADコア試験 のオープンラベル継続期には、当初の1795名のうち1500名近くの患者が参加し、参加者は18ヵ月間の投与を受けた後に、2週間ごとのレカネマブ(10mg/kg)の点滴静注を継続するか、プラセボからこの治療に切り替えた。

現在得られているこれらの患者の36ヵ月後のデータは、臨床的認知症評価尺度-Sum of Boxes(CDR-SOB)スコアがベースラインから平均3.09ポイント悪化していることを示している。18ヵ月後に、レカネマブ投与群とプラセボ投与群のCDR-SOBの差は平均0.45ポイントであった。36ヵ月後に、人口統計学的特性と病期が類似したアルツハイマー病神経画像戦略(ADNI)試験で得られたマッチする過去の対照群に対してレカネマブ群を比べたところ、その差は平均0.95ポイントに拡大した。

18ヵ月目に治療を継続した患者では、18ヵ月目にプラセボから切り替えた患者よりもCDR-SOBの低下が有意に少なかったが、対照群よりも改善がみられたのは両群とも同じであった。

レスポンダー解析では、レカネマブ治療によって36ヵ月間のAD進行が有意に30%抑制されることも示された。つまり、CDR-SOBスコアが軽度認知障害(0.5~4.0点)から軽度AD認知症(4.5~9.0点)または軽度~中等度認知症(9.5~15.1点)に移行するまでの期間である。

ヴァン・ダイク氏は、ベースライン時にタウが全くないかタウ濃度が低い(標準化取込値比[SUVR]が1.06未満)患者141名(全患者の41.2%)が、18ヵ月から36ヵ月にわたる安定または改善を示したことを強調した。

レカネマブ治療を継続した患者のうち、59%は36ヵ月時点でCDR-SOBスコアの悪化がみられず、51%に改善がみられた。同様の調査結果が、アルツハイマー病評価尺度の認知機能下位尺度(ADAS-Cog14)と軽度認知障害における日常生活動作尺度(ADCS-MCI-ADL)でも得られた。

ヴァン・ダイク氏は、タウが全くないかタウ濃度が低い患者のサンプル数が少ないので、ベースラインのアミロイド値が低い患者(60センチロイド未満)の結果を示した。これらの患者は、レカネマブ治療による改善を継続的に示し、全患者の半数を少し上回る人数に相当した。36ヵ月後、46%の患者でCDR-SOBスコアの悪化がみられなかった一方で、33%の患者は改善していた。この場合も、ADAS-Cog14とADCS-MCI-ADLについて同様の結果が得られた。

「ここでの真のメッセージは、病変が少ないこれらの群ではレカネマブが特によく効くということであり、レカネマブ治療による早期介入の重要性を特に際立たせている」とヴァン・ダイク氏は述べた。

バイオマーカーの結果は、18ヵ月後のアミロイドクリアランス以降も治療を継続することを支持するものであった。この時点(オープンラベル継続フェーズのベースライン)では、患者の約70%がアミロイド陰性(30センチロイド未満)であったが、継続的な治療による臨床的改善は依然として明らかであった。アミロイドPETにおける変化はわずかであったが、アミロイドβ42/40比の変化量は改善し続けた。

CLARITY ADコア試験では、血漿中のリン酸化(P)-タウ217、特にタウのもつれを追跡する脳脊髄液中の微小管結合領域-タウ243によって示されたように、タウ病変の進行速度が18ヵ月間で44%遅くなったという証拠も得られたことをヴァン・ダイク氏は述べた。

同氏は、「レカネマブによる長期治療によって新たに確認された臨床的に重要な有害事象はなかった」と報告した。データは約3480人年の薬物曝露について評価され、平均治療期間は2.2年であり、450名を超える患者については3.0年であった。

「曝露を増やすと、有害事象(重篤有害事象や死亡など)が発生する人の割合は増えるが、月数で調整すると全く増えていない」とヴァン・ダイク氏は述べた。

例えば、アミロイド関連画像異常浮腫(ARIA-E)の36ヵ月時点の発生率は、CLARITY ADコア試験と継続試験の患者1616名では14.7%であったのに対し、レカネマブ投与患者898名では18ヵ月時点で12.6%、プラセボ投与患者897名では1.7%であった。しかし、曝露月数で調整すると、100人年当たり6.8に対して、それぞれ9.6人年と1.2人年であった。

同氏は、治療開始後6ヵ月間は、ARIA-Eのリスクが最大であると思われ、その後はプラセボと同程度の低率になると説明した。

また、ARIAは長期進行の促進に関連しておらず、ARIAがあった患者となかった患者を別々に解析したところ、CDR-SOBが悪化するまでの時間は類似していたことを付け加えた。

レカネマブ治療の理想的な維持量

レカネマブのこのような長期治療効果は、アミロイド斑が除去された後も産生され続ける神経毒性オリゴマーとプロトフィブリルを標的とする薬剤の二重作用メカニズムに由来することをラリサ・レイダーマン氏(エーザイ株式会社)は説明した。

レカネマブ治療継続の根拠を検討するいくつかの発表の中で、同氏は、「レカネマブ研究チームによって作成された準機構的な薬物動態および薬力学モデルとともに、フェーズ2 201試験  から得られたバイオマーカー結果によって、アミロイドクリアランス以降のレカネマブの理想的な維持量は、18ヵ月後または24ヵ月後から毎月10mg/kgであることが示唆されている」と説明した。

同氏は、レカネマブ10mg/kgを2週間ごとに18ヵ月間投与され、その後平均2年間治療を中止した201試験の31例のデータを示し、治療中止による有害作用を実証した。

その2年間、治療の臨床効果は維持されたが、認知機能の低下率はプラセボを投与された患者40名と同レベルに戻った。

治療の中断は、アミロイド陽電子放射断層撮影(PET)での再蓄積が21%、アミロイドβ42/40比の悪化が47%、ならびに血漿グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、P-タウ181およびP-タウ217の再蓄積率がそれぞれ30%、24%および13%であったことに関連していた。

薬物動態および薬力学モデルには、201試験コアフェーズとオープンラベル継続フェーズから得られた最大110ヵ月間のレカネマブ曝露データ、およびCLARITY ADコアフェーズとオープンラベル継続フェーズから得られた最大54ヵ月間のレカネマブ曝露データが含まれる。

「これらのモデルによって、治療中止時の体液バイオマーカーの変化は、疾患進行についての感度の高い指標となることが示された」と同氏は述べた。

アミロイドβ42/40比に対するレカネマブ治療の効果の半分は6ヵ月後に失われ、アミロイドPETにおける効果の半分は12.1年以内に失われる。P-タウ181とGFAPについては、それぞれ1.6年と1.7年で治療効果の半分が失われる。

これらのモデルから、レカネマブ10mg/kgを18ヵ月後または24ヵ月後に毎月維持投与すれば、アミロイドの再蓄積と血漿バイオマーカーの悪化を防ぐのに十分であることが予測された。

アミロイドPETとCDR-SOBによって評価した臨床転帰においても、維持投与の効果は4年間の隔週投与と同等であった。

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AAIC24;米国ペンシルベニア州フィラデルフィア:7月28日~8月1日

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