ルーシー・パイパー(medwireNews記者)
medwireNews: 研究者らは、ドナネマブ治療で達成されたアミロイドプラーク減少の大部分は、治療開始64週までに起こり、治療中止後の患者の再蓄積率の中央値は低値を維持すると推定した。
イヴェリナ・ゲオルギエヴァ氏(Eli Lilly、米国インディアナポリス)がAD/PD 2024で発表したこの所見は、早期アルツハイマー病(AD)患者を対象とした第1相試験(n=61)、TRAILBLAZER-ALZ試験(n=257)と延長試験(n=72)、TRAILBLAZER-ALZ 2試験(n=1736)と追加9試験(n=1047)のデータの薬力学的および薬物動態学的モデリングに基づいている。
ゲオルギエヴァ氏のデータでは、ドナネマブの閾値(中央値)15μg/mLを維持すればアミロイドプラーク減少に十分であると予測されたが、平均して80%超の患者がこの閾値を超える濃度を維持した。
TRAILBLAZER-ALZ 2の投与レジメンと中止基準に基づき、2万人の仮想患者に76週間を超えて投与を行ったシミュレーションによると、ベースライン時のアミロイドレベルが最高四分位の患者を含め、ほとんどの患者が投与64週以内にアミロイドプラークのクリアランス(<24.1センチロイド)を達成した。
アミロイドクリアランスまでの時間は、ベースラインのアミロイドレベルに左右されたが、年齢、アポリポ蛋白(APO)E ɛ4遺伝子型、ベースラインのタウレベルには左右されなかった。
これらの所見は、アミロイドクリアランスまでの時間がTRAILBLAZER延長試験の参加者では15ヵ月から28ヵ月(平均22ヵ月)、TRAILBLAZER-ALZ 2試験では3ヵ月から14ヵ月(平均8ヵ月)であった、観察された個々の患者のアミロイド予測によって裏付けられた。
またシミュレーションによると、アミロイドクリアランスが達成され、6ヵ月以内に治療を終了した患者では、その後5年間にアミロイドプラークが大幅に増加することはなく、再蓄積率は中央値で2.8センチロイド/年と推定された。
ドナネマブの治療により「患者は未治療のアミロイド陰性患者と同様のプラーク蓄積の軌跡をたどった」とゲオルギエヴァ氏は述べている。
ドナネマブによるアミロイドプラークの減少効果は、統合アルツハイマー病評価尺度(Integrated Alzheimer’s Disease Rating Scale)の病勢進行モデルによると、プラセボと比較して有意な病勢進行の遅延と関連しており、特に軽度認知障害(MCI)と低〜中程度のタウを有する患者において顕著であったことから、ゲオルギエヴァ氏は「早期治療がより優れた効果をもたらすことを示唆している」と指摘している。
この病勢進行の遅延は、プラセボと比較して、時間と共に増加した。しかし、シミュレーションに基づき、一度除去されたアミロイドの再出現は非常に遅いことから、アミロイドが除去されれば治療はほとんど影響を与えず、中止することができると同氏は述べた。
薬剤投与の安全性という点では、特にアミロイド関連画像異常-浮腫/滲出(ARIA-E)のリスクがある。事象までの時間のパラメトリックなハザードモデルでは、テストされた21の潜在的共変量のうち、APOE ɛ4遺伝子型を持つこと、ベースラインの微小出血数が多いこと、定常状態でのドナネマブの平均濃度が高いこと、平均動脈血圧が高いことが、このリスクに大きく影響することが示された。
治療開始24週目におけるARIA-Eのオッズは、非保因者と比較して、APOE ɛ4ヘテロ接合体では1.8倍、ホモ接合体では3.9倍に増加し、ベースラインの微小出血が4つまでは直線性に増加し、定常状態の平均ドナネマブ濃度が中央値52μg/mLに対して最高値233μg/mLの患者では1.2倍、ベースラインの平均動脈血圧が最高値135mmHgの患者では1.04倍、それぞれ有意に増加すると推定された。
ゲオルギエヴァ氏は、「免疫原性がARIA-Eリスクに与える影響はない」と強調した。
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